技術マーケティング#3

友人に講義のレジュメを貸してしまったので、本日の講義を十分に書くことは出来ないけど、ノートにメモした部分があるので、その部分だけ書きます。

今回の講義の概要

企業のマーケティングのひとつとして、消費者からの声(Voice Of Customer)を利用して品質改良や改善、商品開発を行う場合がある。もちろんPOSデータなどを利用して、定量的にどの商品が売れたり売れなかったりしたかなどを検証することは可能なのだが、それは結果からの分析であって、その考察からは強いイノベーションは生まれにくいと考えられる。ここでは、消費者のニーズを定性的に聞いた場合に、それらをどのようにして技術に落とし込んでいくのかを述べる。定性的というのは主に、営業報告書やお客様相談室などに寄せられる生の声である。

マスクを例にとって説明しよう。自社製品のマスクに対してお客が、もっと自然につけられるマスクが良いのに、と言ったとする。その消費者からのコメントは比較的に抽象的なため、そのコメントを一段階落とし、より具体的にする。例えば次のようになる。

  • マスクを自然に付けたい
    • マスクの形状が顔に合い、つけている感覚がない
    • マスクをする際に、つけやすい
    • マスクが取れにくく自然の状態を維持できる

それをもう一度繰り返し、消費者のコメントをより具体的に落とし込んでいく。次にそれら項目を物質的な側面から評価を行う。例えば、形状、重さ、大きさ、厚み、などがある。消費者コメントから具体化した項目が物質的項目と対応するかどうかを評価するのである。そして、その項目を重要度別に順位付けをしていき、その商品が解決・目標とすべき設計を行ってくのである。

感想

資料がない分、多少説明を端折ったし理解が不十分で説明し切れていない面が多々あったと思うが、流れとしては上記のような感じ。評価方法によって偏ることもありそうだが、これら作業を資料として見せたら説得力はあるし、また、現状を可視化できるため理解しやすいと感じた。仕事をしていると、何がどうなっているのかが分からなくなるから、現状把握方法としては、便利ツールである。このような現状把握ツールとして経営戦略とかでは、3CとかSWOTとかがあるけど、あれも「THE 分析」ではなくて、現状理解として使われているようだし、きっと、相手にわからせやすいし、自分も理解し易いって面で使う価値がある。

おまけ

ある商品に対して不具合があった場合、消費者は2種類の行動を起こす。

  1. Claim
    • 供給者側(メーカー)が原因で起こった場合にこの様に呼ばれる。商品の取替えや修理を必要とされる
    • PL責任・補償金等の措置が取られる場合もある
  2. Complaint
    • 供給者側(メーカー)に起因しない場合の消費者の苦情。不平、不満に当たる

Complaintが消費者の口から出ているときは、文句を言うだけ自社商品を利用し続けようとしてくれる側面があるため良いとされている。しかし、Complaintが出なくなると、フィードバックもなしに乗り換えられてしまうため、今後の商品設計に対して問題があるとされている。

経営者論セミナー

実際のイノベーションを起こした経営者を呼んで、その経営者が持つイノベーションや技術に対する信念や信条を伺い、自己の経営者像を形作っていこうというこの講義。土曜日の16:30〜@田町で行われる講義で、履修したい人数が多いためほぼMOTの人しか取れない。うーん、興味深い。。

この講義の中で面白いところは、生徒たちが主導で経営者を一人だけ選出し、講義に呼べるよう運営していく。数グループが一人経営者をピックアップし、それぞれ選び出した経営者を是非来てほしい・現実的に呼びやすさで優先順位を決め、生徒主導でアプローチをしていく。そこで、今週の土曜日にどの経営者を呼びたいかなどをディスカッションするのだが、誰にしようかと現在進行形で考え中なのだ。

個人的には、一昔前のイノベーターよりも、近年急成長しているIT業界、特に以下の社長を呼んでみたい。特に、インターネットがコモディティ化しはじめ、その変化をうまく人間のコミュニケーションや時間の使い方に対応させた以下の経営者の話を聞いてみたい。

先輩社員や研究室の先輩のコネを使えば呼べなくもない、、ハズ!

その他に、ファッション界にイノベーションを起こしたユニクロ柳井正代表取締役社長に講演に来てほしい。ただ、現実的か、といわれれば「?」が浮かんでしまうよなー

時をかける少女

とうとう念願の「時をかける少女」アニメ版を見ました!卒論作成時に心の癒しとしてみようと思ったときには、貸し出し中。視が咲きTSUTAYAしっかり在庫管理しろっ、と叫んではや2ヶ月。TSUTAYA旧作100円キャンペーンを狙い、借りてみました。

この映画を一言で言うと、青春から成長、です。

題名が“時をかける…”時間にまつわる話で、特にこの映画の中で象徴的な言葉として挙げられている「Time waits for no one」。時間という不可逆的な事象をひっくり返せる能力を、とある女子高校生が身につける話です。話の内容は割愛して、このアニメで面白いなぁと思ったところは3つあって、一つ目としてコメディ良さを追求していることがあります。まるで芸人のコントを見ているかのような錯覚に陥らせる映画のテンポ。見入ってしまいましたね。次に、コメディ良さもありながら、日本の未来を暗示していること。この映画のひとつのキーファクターとなることなので伏せておきますが、おそらくこの映画を見るであろう高校生を含む若い年代の人たちに、現状のままでは壊れてしまう日常は実はものすごく大事なものであるって事を伝えたかったのかなと個人的には解釈しました。最後に、日本のアニメのクオリティをまざまざと感じました。3Dと2Dを組み合わせた映画としての映像の伝え方。高校時代の純粋さを思い出させるストーリー性。常にどきどきさせる流れ、見せ方。など、さすがアニメ大国日本だなーと感動しましたね。


このアニメ映画は昔の映画のリバイバル?なのかな。


まぁ、またこう言った面白い!と思えるような映画に出会いたいものです。

時をかける少女 通常版 [DVD]

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企業戦略を少し

昨日と今日で企業戦略についての講義を受けた。戦略って「意外と抽象的な概念」なんだなーと、自分が今まで考えてきた戦略と昨日今日で言われた戦略とのギャップを感じた。おそらく、戦略の定義を戦術よりに解釈してたんだなと一人納得。。

Chandler(2002)によると戦略とは“企業の基本的な長期目標や目的を決定し、これらの諸目標を遂行するために必要な行動のコースを採択し、諸資源を割り当てること”と述べている。

多くの大学生は経営戦略を考えることはかっこいいことだと認識している。経営戦略を考えることは企業を動かすゲームみたいであり、失敗しても考えているのは空想の世界だから問題ないなーとゲーム感覚な点があるからだ。しかしながら、実際の経営戦略は血反吐が出るくらい辛いものだと感じる。教授も、血尿が出たら社長として一人前、見たいな事を言っていた。戦略の方向性を大きく間違えたら、それこそ株主だけでなく従業員、強いては社長自らを首を絞める結果となってしまう。

ビジネスゲームかつ経営に正解なんてない、からたかが講義で重たい責任を感じながら戦略を決めていくのもどうかしているが、まぁ言っても現実感にはなかなかたどり着かないよなーと。

あと、企業戦略の定義で、榊原(2002)は“ドメインを定義し、資源配分を決定し、ポジショニングを行う”ことと述べており、この「ドメイン」って何だ!?と思ったので調べてみた。

ドメインとは

企業が定めた自社の競争する領域・フィールドのこと。事業ドメインともいう。

企業はドメイン(事業ドメイン)の設定により、戦う領域を設定し、組織活動の指針とする。ドメインは、企業の方向性を示す上で、非常に重要な意味を持つ。

例えば、ある鉄道会社がドメインを「鉄道事業」と定義した場合と「総合輸送事業」と定義した場合とでは、おのずと環境変化に対応する発想が変わってくる。「鉄道事業」と定義した場合は、輸送手段の進歩あるいは他の輸送手段との競合に対し、鉄道という枠の中でのみ差別化して優位に立つことを模索する。
一方、「総合輸送事業」と定義した場合は、経営環境の変化に対し、鉄道以外の輸送手段にも参入することにより競争優位を確立することを考える。つまり、他の輸送手段との競合を常に視野に入れた戦略を立てることになる。

http://www.globis.jp/mw509

なるほど。要するに、自分は誰だ?ってことか。


君は会社員である前に○○さんの夫だろ!仕事は俺らに任せて奥さんのもとへいってやりなよ。


うん。その人には、会社員というドメインと夫というドメインがあり、会社員というドメインの場合、仕事を続けなければいけない。逆に自分を夫とドメイン定義した場合、出産間近の奥さんの下へ駆けつけなければならないってことね。

企業も同じことが言えて、自分が誰で何をやるべきであるかをしっかり定義し、その幹に応じて事業を展開していくということですね。

ふむふむ。

技術マーケティング#2

本日は主にアサヒビールの商品企画・開発における成功事例についての講義であった。時系列的にビジネスを見ていくとなんだか面白いなと感じた話であった。

本日の流れ

  1. 背景
  2. 市場調査から問題意識
  3. 解決策として〜技術マーケティング
  4. スーパードライの功罪

1.背景

  • 1950年代から80年代後半までKIRINがビール業界を牛耳っていた
    • KIRINの市場シェアは約60%超
    • アサヒは85年には10%まで減少
  • このままではKIRINの独占状態となってしまうため、何か新たなイノベーションが必要となった

2.市場調査から問題意識

  • ビールに関するアンケート調査を行った
    • 東京と大阪でそれぞれ5000人を対象に試飲調査を実施
    • 消費者の声(Voice Of Customer)を聴くことで、ビールに関する潜在的欲求を探ろうとした
  • その結果、20-30代の男性は現在のビールに対して不満があることが発覚
    • 軽快で飲みやすいビール・現状を上回るビールが飲みたい
  • 品質により差別化をすればいいのではないか
    • 特に、飲みやすさと呼ばれる、辛口・生・コクとキレを重視

3.解決策として〜技術マーケティング

解決策として以下の5点が行われた。

  1. 新品質を創り出す
    • 新辛口酵母(318号)を発見
      • これはコクとキレの二律背反を両立する酵母であった
    • アルコール度数4.5%と比べて0.5%高い5.0%
    • ホップの使用量を10%から20%に増加
  2. フレッシュマネジメントを行った
    • 要するに「新鮮さ」を消費者に届けることを行った
      • 時間が経過するとうまみが失われるため
      • 3ヶ月以上の在庫は回収
      • 生産から配達まで期間を短縮した('92年では8.9日を)
  3. 容器を従来通りのガラス瓶と、新たにアルミ缶でも発売した
    • 瓶はリユースが簡単のためコストが低かったが、瓶自体は重く、量が多い事が問題
    • そこで、アルミ缶を使用した
      • 簡単に飲み干すことができる
      • 自動販売機での販売も可能に
      • 女性客も手軽さから取り入れることに成功
  4. スーパーやコンビニでも発売を開始(新たなチャネルを創出)
    • 従来は一般酒販店でしかビールは売られていなかった
      • 販売時間・販売場所が限られている
    • コンビニ・スーパーは夜遅くまで営業⇒帰宅時のサラリーマンにとって都合が良い
  5. 選択と集中を行った

上記の主だったマーケティング等の施策から、スーパードライが発売された1987年3月以降、キリンの顧客を奪い、'98年にはビール業界の市場シェアを逆転した。

4.スーパードライの功罪

スーパードライが大ヒットしたが、それに伴い次なる成長への行動に出るのが遅れている。それは、現在大流行している第三のビールの新製品開発である。持続的に成長を行っていくには、絶え間のないイノベーションが必要となるが、スーパードライと言う大きな柱に頼っていたアサヒは次なるイノベーションに出られないというジレンマに悩まされている。

感想・意見

 この事例のほかに花王のアタックについての話もあったが、市場調査、消費者動向調査が有用であることってことかな。ただ、調査の際は、目的を持って、注意深く問題を探る必要があるね。これはマーケティングの基本であり、一番重要なところ。一橋の先生も言っていたが、コンセプトがはっきりしない以上は、アンケートを取るべきではないし、取ってはいけないと言っていた。

 あと、日本国内での市場変動を起こすイノベーションは今後はあまり起きないと思うから、日本のビール市場が先細りの中で日本の企業が世界に出ていく際に、どのようにシェアを取っていくかに興味があるな。アサヒとキリンでどちらが成功するとはまだよくわからんから、ちょっと両社の社長のコメントを見てみることにした。以下参照。両社社長の世界市場に向けての発言で、明らかにアサヒの方が具体性があって面白そうだなと思う。それは、キリンの社長が言っているような質的拡大で海外で飲料業界のリーディングカンパニーになるには抽象的で、ホントになれるの?と心配してしまう。それに比べてアサヒ社長はM&Aによる買収を通じて、他国の企業を武器にビールの飲み方など文化的背景を強みに勝負していけそうな印象を受ける。ただ、社長のメッセージだけで企業の世界での成功について判断することは十分ではないが、社長の方向性で企業が変わっていくことも確かである。まぁ、なんといってもこれらビール産業の大手企業の社長がメッセージで海外戦略について述べているあたりが、日本市場の限界を示しているよなー。

代表取締役社長 三宅占二さんの株主・投資家の皆様へのメッセージより抜粋


構想実現に向けての第2ステージである「2010−2012キリングループ中期経営計画」では、グループ一体となった経営体制で企業価値の向上を図り、独自のビジネスモデルとして推進している「綜合飲料グループ戦略(酒類と飲料のバリューチェーン融合による価値創造)」やムリ・ムダ・ムラを排除するリーン経営の実現によって、“質的拡大”を成し遂げ、アジア・オセアニア地域のリーディングカンパニーへと飛躍していきます。

http://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/policy/message.html

代表取締役社長 泉谷直木さんの株主・投資家の皆様へのメッセージより抜粋


グループ成長基盤の強化を目指し、4月には豪州第2位の飲料会社「シュウェップス・オーストラリア社」を完全子会社として買収し、更に中国第2位のビール会社「青島啤酒股份有限公司」の一部株式を取得するなど、アジア・オセアニア地域での国際ネットワークを拡大することができました。

http://www.asahibeer.co.jp/ir/message/

企業経営と情報#1

今日は「企業経営と情報」という講義に参加した。

NRIの潮見さんが客員講師として行っている講義です。今回は一回目ということでオリエンテーションだったので、自己紹介などでとどまっておりましたが、なかなか面白い講義になるのかなーと思いました。

ひとつ面白いなーと改めて感じた言葉があったので、紹介します。

  • 学者 = 理論
  • 実務家 = 持論

学者はもちろん一般的に言われている理論を講義で話しています。それに対して、実務家というかBusiness畑の人は理論の上に乗っかっている持論を語るらしい。どちらも面白いけど、個人的には自己を語ってくれる実務家のほうが好きだなー。

技術マーケティング#1

今日は、今年度初めての大学院講義でした。今日受けた講義をこれから簡単にまとめていきたいと思う。それでは、東京工業大学イノベーションマネジメント研究科技術経営専攻の「技術マーケティング」の簡単なおさらいをレビューする。

第一回講義の構成

  1. 技術経営について
  2. 技術マーケティングとその成功例

1)技術経営について

  • MOTの必要性
    • 日本のテクノロジー産業は多くの技術開発には成功しているが、事業として成功していない
    • 科学⇒技術⇒商品化(事業化)⇒事業の発展と言った一連の流れのManagementが必須
    • 日本の強みである技術をManagementすれば世界的な成果を上げることができる
      • 技術経営:技術が関わる企業経営の創造的かつ戦略的なイノベーションのマネジメント
      • 山之内昭夫(1992)「新技術経営論」
  • 死の谷」の存在
    • 基礎研究から市場投入に移るフェーズが困難
    • 技術革新には3つの「死の谷」がある
      1. 基礎研究⇒技術開発
      2. 技術開発⇒商業化
      3. 商業化⇒競争優位(この点が長田先生独自だそうだ)
  • 日本の高い技術が成果につながっていないのは3つの「死の谷」に妨げられているから

2)技術マーケティングとその成功例

  • 成功事例として2つの例を挙げる
    • アサヒビールのスパードライ
    • 花王のアタック
      • 両製品とも同時期に発売し、それ以来ロングセラーとなっている
次回へ続く