技術マーケティング#2

本日は主にアサヒビールの商品企画・開発における成功事例についての講義であった。時系列的にビジネスを見ていくとなんだか面白いなと感じた話であった。

本日の流れ

  1. 背景
  2. 市場調査から問題意識
  3. 解決策として〜技術マーケティング
  4. スーパードライの功罪

1.背景

  • 1950年代から80年代後半までKIRINがビール業界を牛耳っていた
    • KIRINの市場シェアは約60%超
    • アサヒは85年には10%まで減少
  • このままではKIRINの独占状態となってしまうため、何か新たなイノベーションが必要となった

2.市場調査から問題意識

  • ビールに関するアンケート調査を行った
    • 東京と大阪でそれぞれ5000人を対象に試飲調査を実施
    • 消費者の声(Voice Of Customer)を聴くことで、ビールに関する潜在的欲求を探ろうとした
  • その結果、20-30代の男性は現在のビールに対して不満があることが発覚
    • 軽快で飲みやすいビール・現状を上回るビールが飲みたい
  • 品質により差別化をすればいいのではないか
    • 特に、飲みやすさと呼ばれる、辛口・生・コクとキレを重視

3.解決策として〜技術マーケティング

解決策として以下の5点が行われた。

  1. 新品質を創り出す
    • 新辛口酵母(318号)を発見
      • これはコクとキレの二律背反を両立する酵母であった
    • アルコール度数4.5%と比べて0.5%高い5.0%
    • ホップの使用量を10%から20%に増加
  2. フレッシュマネジメントを行った
    • 要するに「新鮮さ」を消費者に届けることを行った
      • 時間が経過するとうまみが失われるため
      • 3ヶ月以上の在庫は回収
      • 生産から配達まで期間を短縮した('92年では8.9日を)
  3. 容器を従来通りのガラス瓶と、新たにアルミ缶でも発売した
    • 瓶はリユースが簡単のためコストが低かったが、瓶自体は重く、量が多い事が問題
    • そこで、アルミ缶を使用した
      • 簡単に飲み干すことができる
      • 自動販売機での販売も可能に
      • 女性客も手軽さから取り入れることに成功
  4. スーパーやコンビニでも発売を開始(新たなチャネルを創出)
    • 従来は一般酒販店でしかビールは売られていなかった
      • 販売時間・販売場所が限られている
    • コンビニ・スーパーは夜遅くまで営業⇒帰宅時のサラリーマンにとって都合が良い
  5. 選択と集中を行った

上記の主だったマーケティング等の施策から、スーパードライが発売された1987年3月以降、キリンの顧客を奪い、'98年にはビール業界の市場シェアを逆転した。

4.スーパードライの功罪

スーパードライが大ヒットしたが、それに伴い次なる成長への行動に出るのが遅れている。それは、現在大流行している第三のビールの新製品開発である。持続的に成長を行っていくには、絶え間のないイノベーションが必要となるが、スーパードライと言う大きな柱に頼っていたアサヒは次なるイノベーションに出られないというジレンマに悩まされている。

感想・意見

 この事例のほかに花王のアタックについての話もあったが、市場調査、消費者動向調査が有用であることってことかな。ただ、調査の際は、目的を持って、注意深く問題を探る必要があるね。これはマーケティングの基本であり、一番重要なところ。一橋の先生も言っていたが、コンセプトがはっきりしない以上は、アンケートを取るべきではないし、取ってはいけないと言っていた。

 あと、日本国内での市場変動を起こすイノベーションは今後はあまり起きないと思うから、日本のビール市場が先細りの中で日本の企業が世界に出ていく際に、どのようにシェアを取っていくかに興味があるな。アサヒとキリンでどちらが成功するとはまだよくわからんから、ちょっと両社の社長のコメントを見てみることにした。以下参照。両社社長の世界市場に向けての発言で、明らかにアサヒの方が具体性があって面白そうだなと思う。それは、キリンの社長が言っているような質的拡大で海外で飲料業界のリーディングカンパニーになるには抽象的で、ホントになれるの?と心配してしまう。それに比べてアサヒ社長はM&Aによる買収を通じて、他国の企業を武器にビールの飲み方など文化的背景を強みに勝負していけそうな印象を受ける。ただ、社長のメッセージだけで企業の世界での成功について判断することは十分ではないが、社長の方向性で企業が変わっていくことも確かである。まぁ、なんといってもこれらビール産業の大手企業の社長がメッセージで海外戦略について述べているあたりが、日本市場の限界を示しているよなー。

代表取締役社長 三宅占二さんの株主・投資家の皆様へのメッセージより抜粋


構想実現に向けての第2ステージである「2010−2012キリングループ中期経営計画」では、グループ一体となった経営体制で企業価値の向上を図り、独自のビジネスモデルとして推進している「綜合飲料グループ戦略(酒類と飲料のバリューチェーン融合による価値創造)」やムリ・ムダ・ムラを排除するリーン経営の実現によって、“質的拡大”を成し遂げ、アジア・オセアニア地域のリーディングカンパニーへと飛躍していきます。

http://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/policy/message.html

代表取締役社長 泉谷直木さんの株主・投資家の皆様へのメッセージより抜粋


グループ成長基盤の強化を目指し、4月には豪州第2位の飲料会社「シュウェップス・オーストラリア社」を完全子会社として買収し、更に中国第2位のビール会社「青島啤酒股份有限公司」の一部株式を取得するなど、アジア・オセアニア地域での国際ネットワークを拡大することができました。

http://www.asahibeer.co.jp/ir/message/